「可愛いよなぁ、真理子ちゃんって。」



   残酷すぎだよ。

   こんなに近くで。

   好きな人が他の女の子の話をするなんて。










   I 
hink so to










   「可愛いよなぁ・・・真理子チャン。」













   目の前でぽーっとして、ため息をつくのは。


   幼馴染の千石清純。


   私の一方通行な想いの相手。













   好きになったのか、何なのか。


   同じクラスの真理子を「可愛い」と清純が言い出してから。


   毎日、毎日、「真理子」「真理子」言い出してから。


   毎日、私はこんなにも胸が苦しいのに。


   ぜんぜん、気づきそうもない。


   ため息をつきたいのは、コッチの方だよ。













   でも、いつだって私のため息は


   清純の耳には届かずに、ただ宙を彷徨うだけだった。













   「ねぇ、。ちょっとお願いが。」



   「突然、何?」



   「今日の英語の宿題なんだけど。」



   「・・・また?」



   「今晩、写させて欲しいなぁ・・・なんて。」













   お隣さんの幼馴染。


   小さい頃から近くにいすぎたから。


   清純が女として私の事を見てない事はなんとなく、わかってた。













   「イヤ。」



   「えぇ!?」



   「とか言ったら困るでしょ?しかたないから写させてあげる。」













   けど、毎日こうやって一番側にいれる幼馴染の特権が嬉しくて。


   私は、毎日。せいいっぱい「清純が好き」だったから。


   ずっと、一緒にいたら。


   いつかは私の気持ちに気づいてくれるかもしれない。


   なんて少し、思ってた。
















   「マジ?が親友でヨカッタ!」
















   けど、それは甘い考えだったみたい。













   毎日、毎日、どんどん大きくなる好きの気持ち。


   そんな、ある日の昼休みの教室で
  

   面と向かって笑顔で言われた「親友」の一言に


   私の小さな胸は、自分でもビックリするくらいにズキンと鈍く疼いた。













   「清純と私が親友・・・?」



   「うん。と俺、親友でしょ?」



   「・・・バーカ清純。」



   「へ?」



   「私はね、親友なんか思った事なんかないもん・・・」



   「・・・?」













   あーあ。


   こんな風に言うつもりなんか、コレぽっちもなかった。


   もっと、ロマンチックに・・・とか思ってたのに。













   「ずっと、ずっと、清純の事好きなんだから。親友なんかじゃないもん。」



   「好きって・・・俺?えぇ!?」



   「・・・他に誰がいるのよ。」













   一瞬、イスから転げ落ちるんじゃないかって程。大きく動揺してから。


   清純はガシガシ困ったように頭を掻いた。













   「だってとのコト、そんな風に考えたコトなかったし・・・。」



   「・・・・・。」



   「は友達だって、ずっと思ってたからさ・・・。」



   「友達じゃなく・・・女の子として見て欲しいもん・・・真理子とかと同じみたいに・・・。」













   真理子、真理子言わないで。


   私のコトも女の子として見て欲しいよ。














   「急に言われても・・・ごめん・・・難しい・・・。」














   清純の困った声が。


   心底困ったようなその表情で


   ぎゅうっと胸が締め付けられて。













   「ごめん」なんて。



   ひどいよ、清純。













   カバンを掴んで思わず教室から飛び出した。


   最後に目に映ったのは、相変わらず困った表情の清純の顔。













   後は、走って…よく覚えてない。


   気づいたら自分の部屋のベットで、情けないくらいに


   声を上げて泣いてた。













   「バカ清純っ・・・。」













   いくら泣いたって、喚いたって。駄々こねたって。


   清純が私のものになるわけじゃないし。


   私が真理子になれるわけでもない。


   ガキっぽくてますます女としてなんか見てもらえない。













   そんな事。


   わかってるけど、泣き止めなかった。













   真理子と清純は、正直(絶対、認めたくないけど)お似合いだと思う。


   バカだけど、清純はかっこいいもん。


   学年でも1番可愛い真理子と並んだら美男美女で絵になると思う。













   あーあ。


   私がもう少し、可愛かったら。


   私がもう少し、女らしかったら。


   清純は振り向いてくれたのかな。













   真理子みたいに。


   可愛くて。


   大人しくて。


   胸も大きくて。


   そしたら、清純は振り向いてくれたのかな。













   親友じゃなくて、女の子としてみてくれたかな。


   真理子の話する時みたいに「可愛い」なんて言ってくれたのかな。













   「ひっく・・・清純・・・。」













   1人部屋でポッキー食べて泣いてる私はバカみたいだ。


   天井が涙で霞んで。


   大好きなムースポッキーがちっとも美味しくない。













   「きよすみぃ・・・。」













   私ね、清純がもし真理子とうまく行ったら。


   「おめでとう」


   笑顔でそう言ってあげる。













   ・・・・ウソ。


   やっぱり、そんなの出来ない。


   きっと、私。


   廊下で話してる2人の間に割り込んで、邪魔するわ。













   あはは。町でよく見るオバサンじゃないコレじゃ。


   こんなに根性悪いんだから。


   振られて当然・・・か。













   「バカ・・・・清純・・・。何が親友よー・・・。」













   少しだけ、少しだけ期待してたの。


   いつだって側にいさせてくれたから。


   いつだって、笑顔で私のコト見ててくれたから。













   「親友なんてコッチは思ったことないわよ。あるわけないじゃない・・・。」













   もしかしたら、って。


   告白した私に「俺もだよ。」そんな返事がくるのを。


   少し、ほんの少し期待してた。













   「私はっ・・・私は・・・。」













   好きだから、ずっとずっと側にいた。


   ダレよりもアナタの色んな顔が見たくて側にいた。


   親友になりたかったワケじゃない。













   私はアナタの。


   清純の「特別」になりたかった。













   「清純のバカぁっ…」













   何度目かの言葉。


   ねえ、清純。もう諦めるしかないのかな。





 







   でも、無理。


   忘れられるわけないじゃない。


   そんな簡単に忘れられる程の想いじゃないんだもん。


   好きじゃなくなるなんて無理だよ。絶対。













   バカなとこも。


   どうしようもなく、優しいとこも。


   「元気出せって。」励ましてくれる暖かさも。


   その手も。腕も。髪も。声も。


   小さい頃から誰よりも好きなんだもん。













   「振られちゃったっ・・・・。」













   泣き始めてから、どれくらい時間がたっただろう。


   窓の外は暗くなり始めていて。


   しゃくりあげる喉が痛い。













   「親友なんかじゃないもんっ・・・。」













   涙でぐちゃぐちゃな顔を乱暴に握って。


   もう1本ポッキーをくわえた---調度、その時。













   私の携帯が着信を告げる「笑点」のテーマを鳴らし始めた。













   着メロを笑点のテーマなんかにするんじゃなかった・・・。


   雰囲気ブチ壊しじゃない。













   呆れて乱暴に携帯をサイドテーブルから取り上げて、ディスプレイに視線を向けた。


   そこには 「 着信   千石 清純 」













   取りたくない。


   頭はそう思ってるのに。


   私の身体は条件反射みたいに、清純の声を欲して。













   「もしもし?」













   聞きたくないはずなのに。


   ピって電源切っちゃえばいいのに。


   清純の声がどうしようもなく愛しくて。


   電源のボタンが押せない。切れない。













   「なによっ・・・。」



   「・・・泣いてる?」













   泣いてるわよ。見せれないくらい。


   目は腫れるし、喉は痛いし。


   もうボロボロよ。













   「あのさ、窓。開けてくんない?」



   「・・・・窓?」



   「そう窓。」



   「何で・・・。」



   「いいから、早く!ホラ、早く!」













   のそのそとベットから降りて。


   清純の言う通りに窓を開けた。


   冷たい風が窓から吹き込んで、火照った頬を優しく撫でる。


   外には真っ黒な闇といつの間に降りだしたのかチラチラ舞う真っ白な雪。













   それと、私の部屋の窓の下。


   外灯に照らされて。


   携帯を片手に2階の私に向かって手を振る----清純がいた。













   「聞こえるかー?」



   「聞こえる・・・けど、何しに来たの。ひっく・・・慰めならいらないからね。」



   「違うよ。あれからさ、俺ずっと考えたんだ。」













   何を考えたって言うのよ。


   考えた末。


   私のコト、やっぱり友達だ。親友だ。なんて言いに来たなら。


   ぶん殴ってやるから。













   「俺さ、今までずっとのコト、親友だなって思ってた。」













   バカ、清純。


   私にとどめ刺しに来たわけ?













   「けどさ。真剣に考えた結果。何か違うみたいなんだよね。」













   何がよ。


   もう、ホントはね今だって胸が痛いんだから。













   「もう、いい。寒いから、閉めるからね。」













   開きっぱなしの窓に手をかけると。













   「わー!待って!!!こっからが重要なんだから!最重要!」













   清純が大きく叫んで。


   コッチに向かって深呼吸をした。













   「違うんだ。」



   「何が違うのよ。」













   私は女として見れない、幼馴染の友達。


   真理子は清純の大好きな相手じゃない。













   応援するわよ。


   悔しいけど。













   だって、今でも私。


   清純の笑った顔が大好き。













   大好きなんだから。













   「・・・応援したげるわよ。頑張ってね。」













   それが例え、真理子とか他の子に向けられた笑顔でも。


   清純の笑った顔、見たいもん。













   「俺・・・に応援されても・・・困る。」



   「何が困るのよ。」













   もう、苦しくて。


   平気な表情するのも、いっぱいいっぱいなんだから。


   困るなんて言わないで。


   思わず、声が大きくなって。


   同時に涙が込み上げた。













   「泣かないでよ。」













   清純はそんな私にそう呟いて。













   「イイ?聞いて?違うんだ。違う。違うから。」













   2階の私に向かって、頭を撫でる振りをした。













   「俺さ、確かに真理子ちゃんを可愛いと思う。ソレは認める。」



   「うん・・・。」



   「可愛い、可愛い、いつも言ってた。ソレも認める。」



   「うん・・・。」



   「でもさ、真理子チャンとは会えなくなっても話せなくても別にイイけど。」



   「うん・・・ってそうなの!?」



   「うん。そうなの。可愛いと思うケド、好きとかじゃないんだよ。の勘違い。」



   「は・・・?」



   「勘違いだよ。早とちり。泣き虫。のバカ。」



   「ひっく・・・バカじゃないもん・・・。バカはキヨでしょっ・・・。」













   可愛いけど、好きではないって。


   憧れとか・・・そんなのって事?













   「で、考えた。」



   「ひっく・・・何をよ・・・。」



   「と俺のコト。女の子としての。」



   「難しいって言ったくせに・・・。」



   「ゴメン。あの時は驚いた方が強かったんだ。傷つけてホントにゴメン。」



   「・・・ひっく・・・答え出たの・・・?」



   「うん。俺を好きだって言ってくれて泣いちゃったを見て俺なりに考えた結果。」



   「・・・・・うん。」



   「とは、絶対、離れたくない。話せないなんか考えられないよ。」














   一瞬、息が止まるかと思った。














   「これってさ、意識してなかったけど。恋なんじゃないかと俺、思うんだ。」














   バカ。













   「にもし、彼氏が出来たらって考えたら、スゲー嫌だったし。」













   勝手がいいんだから。













   「そんな事になったら、全力で邪魔しようって思ったし。」













   私と同じコト、言わないでよ。













   「親友なんかじゃなくて。」













   好き。好きよ。大好きなの。



















   「コレがを好きだって事なんじゃないかと俺、思ったんだよ。」



















   いつもヘラヘラしてる清純の。


   真剣な表情と言葉に涙が出た。













   ホントは、1回振っておいて今更気づいたって遅いわよ!


   かっこつけて、意地張って、そう言ってやりたかったけど。













   清純の側にいたい。


   少しでも清純が私を好きかもと思ってくれるなら。


   私は自分に甘いし。


   何よりも、自分の幸せが大切。


   私の幸せは、清純の側にいることだから。


   一回振られたコトなんか、一瞬で忘れちゃったわよ。













   「ねえ、清純。」



   「何?」



   「傷ついてたんだから。身体から水分なくなるかと思うくらい泣いたんだから・・・。」



   「うん。ホントにゴメン。にそんな顔させるつもりじゃなかった。」



   「清純のこと、殴りにこれから降りてもいい?」



   「う・・・イヤだけど・・・イイヨ・・・(覚悟してますから・・・)」













   開いた窓をバチンと勢いよく閉めて。


   慌てて部屋を飛び出した。


   下に行って清純を見たら。


   殴ったりなんか出来るわけない。


   そんな気なんかコレぽっちもないし。













   すぐに清純の身体に飛びついて。


   ずっとずっと言えなかった想いの分。


   ぎゅって強く抱きついて。


   きっと、私。泣いてしまう。


   そんな自分が頭に浮かんだ。
















   もう、「やっぱり親友だった」なんて言わせないから。


   やっぱり前言撤回なんて言わせないから。


   お願い、飛びついたら抱きしめてよ。


   今日、ポッキー食べ過ぎたから、少し重たくなったかもしれないけど。
















   それも全部。


   清純のせいなんだから。


   それくらい我慢しなさいよ。



















   ねえ、清純。


   今ね、私。


   生きてきてよかった。本当にそう思ったよ。
















   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





   「ホラ、。そんなに泣かないでよ!」




   「ひっく・・・バカ清純・・・。」




   「の好きなムースポッキーいっぱい買ってあげるから泣きやんで?」




   「ポッキー食べ過ぎたからいらないもん・・・。」




   「食べ過ぎたって・・・何本食べたの?」




   「5箱・・・・。」




   「5箱!?(本じゃなくて箱かよ!?)」








   END





:綾音様の素的夢:
フリー夢で、私の大大大好きなお話だったので貰って来ちゃいましたvv
綾音様のサイトへはLINKにてunconditional loveよりどうぞ☆
とっても素敵サイト様ですvv